
AIを使う人が社内に数人いると、必ず起きることがあります。同じ仕事を頼んでいるのに、人によって出てくるものがまったく違うという状態です。原因は個人のセンスではなく、指示の型を持っていないことにあります。この記事では、型とは何か、なぜ1つで足りるのかを整理します。
毎回ゼロから書いて、毎回違うものが出てくる
型がない組織では、こうした症状が同時に現れます。
- 指示文を毎回その場で考えているため、頼むたびに文面が変わる
- うまくいった指示が残っていないので、次の人が同じ試行錯誤をやり直す
- 「AIが得意な人」と「苦手な人」に分かれ、得意な人に依頼が集中する
- 良い出力が出たときに、なぜ良かったのかを誰も説明できない
このうち最後の症状が、いちばん厄介です。再現できない成功は、仕組みになりません。
指示が長くなるのは、要素が抜けているから
多くの人は、出力が思い通りにならないと指示文を長くします。 説明を足し、注意点を書き添え、例外を並べる。結果、指示文は毎回200字も300字も膨らみ、それでも狙いから外れます。
長さと精度は関係ありません。必要な要素が入っているかどうかだけです。
AIが判断を外すときは、たいてい同じ種類の情報が抜けています。 誰として答えればいいのか(役割)が抜けている、何のための文書なのか(目的)が抜けている、どこまで書いてよいのか(制約)が抜けている。抜けた部分をAIはその場の推測で埋めるため、毎回違う答えが返ってきます。
つまり、指示が毎回変わるから、出力も毎回変わるのです。逆に言えば、抜けやすい要素を固定した枠を1つ用意すれば、そこに内容を差し替えるだけで済みます。 これが「型」です。

型を構成する5つの要素
型に入れるべき要素は、次の5つです。

- 役割 — AIを何の担当者として扱うか。営業事務なのか、法務チェック担当なのか、ここで出力の視点が決まります。
- 目的 — その成果物を最終的に誰が読み、何を決めるためのものか。社内共有と顧客提出では、同じ内容でも書き方が変わります。
- 制約 — 触れてはいけない情報、守るべき文字数や様式、判断を保留すべき範囲。AIに「やらないこと」を伝える枠です。
- 出力形式 — 箇条書きか文章か、表か、見出しの粒度はどうか。ここを決めておくと、受け取った後の手直しが大きく減ります。
- 良い例/悪い例 — 過去に通ったものと、やり直しになったものを1つずつ。説明よりも実物のほうが正確に伝わります。
重要なのは、型を業務ごとに何種類も作らないことです。見積用、議事録用、メール用と増やすと、結局「どの型を使うか」を毎回考えることになり、型を持たないのと変わりません。枠は1つにして、中身だけを業務ごとに差し替えます。
AIがやる仕事と、人がやる仕事の境界
型を使う運用では、役割分担がはっきりします。
AI側が引き受けるのは、型に沿って形を整える作業です。指定された形式で書き出す、文体を統一する、抜けた項目を指摘する、同じ条件で10案並べる。回数と量に強い部分は、すべてこちらに寄せられます。
人がやるしかないのは、5要素の中身を決めること、なかでも「制約」と「良い例/悪い例」の判断です。
- 不動産仲介であれば、物件説明のどこまでを広告表現として書いてよく、どこから告知事項として扱うのか
- 医療機関の受付業務であれば、問い合わせ対応でどこまで案内し、どこから「受診してご相談ください」に切り替えるのか
- 建設会社の安全書類であれば、協力会社ごとに様式のどこを変えてよく、どこは元請の指定どおりにするのか
この線引きは、責任を負う人にしか引けません。 AIは線の内側で速く動くことはできますが、線そのものを引くことはできません。
型を持つ意味は、ここにあります。線を引く仕事だけが人に残り、その内側の作業はAIが回す。 現場の担当者が、書式を整える時間ではなく顧客ごとの判断そのものに時間を使える状態——型はそのための道具です。
型をどう手に入れるか
型の考え方は5要素ですが、実際に使える文面に落とすには、自社の業務に合わせた記述が必要です。ゼロから組み立てると、たいてい要素の抜けたものができあがります。
そのまま使える**「指示テンプレ」**を、LINEにご登録いただいた方にお渡ししています。5つの要素が枠として用意されており、中身を自社の業務に差し替えるだけでお使いいただけます。
まず1つの業務で試し、社内で共有できる形になってから広げる——この順番が、いちばん定着します。
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