
議事録は、作るのに時間がかかるわりに、作った後に読み返されない書類になりがちです。この記事では、なぜ議事録が機能しないのか、そして録音から「決まったこと」と「やること」を取り出すにはどんな工程が必要かを整理します。
現場で起きていること
会議が終わると、担当者は手元のメモを見ながら議事録を書き起こします。書き上がるのは翌日か、翌々日です。
- 発言をなぞった長い記録になり、結局どこが結論かわからない
- 「検討する」で終わっている項目が、誰の宿題か書かれていない
- 前回の議事録を見返さないまま、同じ議題をもう一度話している
- 議事録を書く担当が発言に集中できず、会議の質も下がる
そして数週間後、「あれはどうなりましたか」と聞かれたときに、議事録を開いても答えが書いていないという状態になります。
なぜ機能しないのか
議事録が機能しない理由は、書き手の力量ではありません。「記録すること」と「分類すること」が、同じ人の同じ作業の中で同時に起きているからです。
会議中の人間は、聞きながら要約し、要約しながら重要度を判断し、判断しながら書いています。この三つを同時にやると、どれかが必ず犠牲になります。 たいてい犠牲になるのは分類です。だから、発言は残るのに、決定事項が浮かび上がってきません。
もう一つの理由は、会議中に結論が言語化されないまま終わることです。「じゃあそういう方向で」「一旦持ち帰ります」で解散すると、そもそも記録すべき結論が存在しません。この場合、議事録がどれだけ丁寧でも、後から何も取り出せません。
つまり議事録の問題は、書き方の問題ではなく、会議で決まったことを「決まった形」に落とす工程が抜けているという問題です。ここを分けて考えると、自動化できる部分がはっきりします。

議事録の工程を分解する
Guidaがこの業務を自動化するとき、次の4つの工程に分けて進めます。

① 録音
まず、会議の音声を確実に残すところから始めます。
当たり前に見えますが、ここでつまずくケースは多くあります。対面とオンラインが混在している会議、発言者が離れている会議、複数人が同時に話す会議では、音が拾えていない箇所が生まれます。音が取れていない部分は、後の工程で絶対に復元できません。
そのため、録音方法と機材の置き方を、会議の形式ごとに決めておきます。あわせて、録音することの周知と、音声データをどこに保管し、いつ消すかも先に決めます。会議には人事情報や取引先の情報が含まれるため、扱いのルールを後回しにしないことが重要です。
② 要約
次に、録音を読める長さの内容に圧縮します。
ここで作るのは、発言の書き起こしそのものではありません。書き起こしは分量が膨大で、結局誰も読みません。必要なのは、**議題ごとに「何が論点で、どういう意見が出て、どこに着地したか」**がわかる形です。
このとき、発言の順番ではなく議題の単位でまとめ直すことがポイントになります。実際の会議は行ったり来たりします。同じ話題が冒頭と終盤に分かれて出てくることは珍しくありません。それを議題単位に寄せ直すだけで、読みやすさが大きく変わります。
③ 決定/宿題/保留の3分類
ここが議事録の中心です。要約した内容を、3つに仕分けます。
- 決定 — その場で結論が出て、もう議論しないもの
- 宿題 — 誰かが持ち帰って、次に何かをするもの
- 保留 — 結論が出ず、条件が揃うまで判断できないもの
この3つを分けることの意味は、「保留」を可視化できることにあります。多くの会議で問題になるのは、決定でも宿題でもない、宙に浮いた話題です。それが議事録上で「検討事項」という曖昧な言葉に紛れると、次の会議でまた同じ話をすることになります。
保留を保留として書き出せば、「何が揃えば決められるのか」を次の会議の議題にできます。 分類は、単なる整理ではなく、次の会議の設計につながります。
④ 担当・期日の付与
最後に、宿題に担当者と期日を付けます。
担当者のいない宿題は、実行されません。期日のない宿題も、実行されません。この2つが欠けたまま議事録に載っている項目は、書いてあるだけで存在しないのと同じです。
自動化の設計としては、会議中に担当と期日が明言されなかった項目を「未確定」として明示的に切り出します。 勝手に推測して埋めてはいけません。「たぶんこの人だろう」で埋まった議事録は、後で誰も責任を持たない項目を量産します。
未確定として出てくること自体に価値があります。会議の最後に「これは誰がいつまでに」と確認する習慣が、ここから生まれます。
AIに任せる範囲と、人が持ち続ける範囲
AIが担うのは、話された内容を漏らさず拾い、決めた形に整える部分です。
- 音声を文字に起こし、議題の単位でまとめ直す
- 長い議論を、論点と着地点がわかる長さに圧縮する
- 発言の中から、結論・依頼・保留にあたる箇所を抽出して仕分ける
- 担当者名と期日が明言された箇所を拾って紐づける
- 担当・期日が不明なもの、分類が曖昧なものを「要確認」として一覧にする
- 前回の宿題と突き合わせ、未完了のものを繰り越す
人が持ち続けるのは、会議の中身に関する判断です。
- 本当に決まったのかどうかの判定 — 「そうですね」と言われても、それが合意なのか、社交辞令なのか、持ち帰りの含みなのかは、その場の空気と力関係を知っている人にしか判断できません。
- 書かないという判断 — 会議では、記録に残すべきでない発言も出ます。人事上の評価、取引先への率直な評価、まだ社内で共有できない検討。何を議事録に載せないかは、AIが決めてはいけない領域です。
- 担当者を誰にするかの決定 — 業務量、経験、他案件との兼ね合い。これはマネジメントの判断です。会話から推測するものではありません。
- 期日の現実性の判断 — 「来週まで」と発言されても、それが実現可能かは、その人の稼働状況を知らないと判断できません。
- 保留を打ち切る判断 — いつまでも保留のままの項目を、「もう決める」あるいは「もうやらない」と決着させるのは、責任者の仕事です。
つまり、AIは「話されたことを取りこぼさず形にする」担当、人は「その内容をどう扱うか」の担当です。議事録は後から責任の所在を確認する書類になるため、この線引きは特に慎重に引く必要があります。
進め方を詳しく知るには
議事録の自動化は、全会議を対象にせず、定例で参加者が固定されている会議から始めるのが確実です。同じ議題が繰り返される会議ほど、宿題の繰り越しが効いてきます。
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